Solution 8 市民目線からの移動・交通を支える環境整備

市民の関心や意欲を高める環境整備こそITSを成功に導くキーポイント

 市民の移動や交通に対する積極的な関与を促していくためには、もっと暮らしの中で地域の交通について関心を持つ機会を作り出していくことが大切になります。決して一方的に押し付けるのではなく、毎日の中で自然と理解できる仕組みでなければ、予測した効果をあげることはできません。
 そのためにも市民や地域との連携を深めていくことが大切となります。地域に根ざした暮らしの中で、交流やイベントへの参加を通じて自然と交通課題について考える機会を作り出していく。そうした地域のプログラムと連携しながら、移動や交通をサポートする環境を整えていくことも広い意味でのITSの重要な取り組みです。
 イベントや社会実験を通してITSへの関心を高めたり、地域の情報ネットワークを活用してスムーズな移動をサポートする情報を発信したり、社会実験への参加意欲を高めるインセンティブを用意するなど、市民とITSとの関係性を高めていきます。
 柏ITSスマートシティは、市民への啓蒙を進めながら、ヒトとマチと、共に成長するITSの実現をめざしています。

「駐車場連携サービス」の研究 -ICTを活用した複数駐車場のエリア内連携と中心市街地活性化-

[研究の背景と目的]

 モータリゼーションの進展による都市の拡散・郊外化は、各地で中心市街地の空洞化(いわゆるシャッター街)の続出を招いています。今後の高齢化社会を維持発展させる自治体財政の観点からはコンパクトシティを設計追求する必要があり、本質的に十分な道路空間容量が確保できない中心市街地では、公共交通中心のTOD(Transit-Oriented Development)を実施する必要があります。高齢化率23.3%(平成23年10月時点)という世界最先端の超高齢社会をまい進しながら公共交通優先に必要な法制度等の前提状況が調っていない我が国では、中心市街地まで自動車が自由にアクセス可能であることが多く、上述のような公共交通優先型の交通まちづくりは各地で困難を極めています。路線の参入と共に撤退も自由化された公共交通サービスの不安定・不十分な地方部や都市部でも老老介護が一般化する今後の社会を想定すると、自動車利用をある程度前提とした中心市街地再活性化策を考えることも現実的な急務と言えます。
 さらに、TODのスムーズな遂行に際しては、通過交通の都市内流入を排除する階層的な環状構造道路のハード整備も不可欠です。しかし、将来社会のために必要なインフラ投資への合意形成には時間も要するため、ITSを含むソフト対策の活用にも期待が寄せられています。
 そこで本研究では、千葉県柏市の旧中心市街地をモデルに、ICTを用いた駐車場のエリア利活用に着目した「交通渋滞問題と中心市街地活性化の両立方法」を提案します。

[駐車場連携サービスのコンセプトと検討の概要]

 柏市が平成21年6月に発表した中長期の都市計画マスタープランでは、多核的ネットワーク構造を特徴とする「柏版コンパクトシティ」のまちづくり実現を目標に掲げて都市軸・道路網という交通移動環境の整備が宣言されています。階層的な道路整備によってまちに直接用事のない自動車通過交通を環状道路に迂回させて都心部の交通集中を軽減する都市交通計画を実現するには、外環状としての千葉柏道路整備・中環状位置でのフリンジ駐車場整備・コア環状内での公共交通優先エリア(トランジットモール)整備・最内部中心市街地での歩行者優先エリア整備を一体的に進める必要があります。既に中心市街地衰退の徴候が確認される状況では、中心市街地のインフラ整備を抑えたソフト対策を中心に交通マネジメントから順次取組む必要があると言えます。そこで本研究では、ITSを活用した駐車場有効活用のソフト施策を検討対象とします。
 現状の柏駅付近では、自家用車による来訪客は駅片側のデパート大型駐車場に集中する傾向があります。駅反対側には駐車スペースに余裕があっても相互に割引サービスが受けられず駐車場入庫待ち渋滞を起こし得ます。
 そこで、現在バラバラに行われている提携店舗と駐車場料金の割引サービスを中心市街地内で共通化し、どの駐車場に停めどの店舗で買物しても同様の駐車料金割引サービスが受けられる仕組みを、ICTを用いて構築します。さらに各店舗での総買物額に応じた適切な駐車料金割引サービスを導入することにより、利用者の回遊を増進し滞在時間を増加させながら、駐車場利用の一極集中の緩和が期待できます。

 このようにICTを活用して複数の駐車場をエリアで連携させまち全体で来訪者の購買に応じた駐車料金の共通連携割引等を行うことで、駐車場利用の需要と駐車場事業者供給の時空間の偏在を調整します。このような駐車場ITSを導入することで、来訪者の滞在時間増による中心市街地での買物額の増加による商業事業者における売上げ増の一部を循環させ、関係者一同にメリットをもたらすビジネスモデルが可能になると考えられます。

柏市地域情報サービス『KASHIWAP』 -人と街の「つながり」を太くする観光ITS-

[実験の目的]

 本実験は、街の案内所や市役所がもつ情報を、ICTを活用してより効果的に発信することによって、地域の活性化に貢献することを目的としています。柏市では、従来、街の案内所としてかしわインフォメーションセンター様が、地域密着型の案内活動を行っており、主に来館された方々に、JR柏駅周辺の情報を、フェイストゥフェイスで対応され、他にも電話、メール、ホームページ、SNSで個別に案内活動をされていました。今回、このような活動を通して蓄積された情報を電子化し貴重な「街のデータベース」として、かしわインフォメーションセンター様の財産として利活用可能にいたしました。これまでの手段に加えて、急速に普及してきたスマートフォンや、街の主要箇所に設置されたデジタルサイネージを活用して、街の魅力を紹介するとともに、より多くの方々にかしわインフォメーションセンター様を知ってもらい、来館される方々を増やしつつ、街の活性化をさらに拡大することを目指しています。

■人と街の「つながり」を太くする観光ITS

[実験の概要]

 2013年の3月より、柏市地域情報サービス『KASHIWAP』を立ち上げて、トライアル実験を開始しました。KASHIWAPという名称は、その名の通り、「KASHIWA」と「MAP」を掛け合わせた造語で、KASHIWAの街のデータベースを、MAPと紐付けて情報発信を行うという意味が込められています。KASHIWAPは、かしわインフォメーションセンター様の持つ信頼性の高い情報や、柏駅周辺のローカル情報を、位置情報提供基盤を活用して、スマートフォンユーザーにお届けするWEBサービスです。KASHIWAPをご利用頂くことで、柏市近郊の方には「新しい価値を提供」し、遠方から柏市に訪れる方には手厚いサポートにより「柏を好きになってもらう」ことを目指しています。また、KASHIWAPは街のデータベースを素早く検索することができる機能や、検索した情報に紐付く店舗、避難所といった「地点」を即座にマップ表示する機能をもち、その場所へのアクセスをサポートします。是非、KASHIWAPをご利用ください。 「KASHIWAP」⇒ http://kashiwap.kashiwa-its.jp/

[実験の運営]

 本実験は、柏ITS推進協議会を構成する柏市と企業が中心となり、かしわインフォメーションセンター様のご協力のもとに実施しております。

■人と街の「つながり」を太くする観光ITS

柏地域スマート移動推進実験 -CO2情報等生活活動情報の配信による一般市民の交通行動変容の促進-

[研究の背景]

 現在の日本における運輸部門からのCO2排出量は全体の約20%を占め、その9割は自動車交通からの排出であり、官民挙げて削減に取り組んでいます。自動車交通からの排出量の削減対策としては、昨今、環境対応車の普及などに期待が寄せられていますが、車両技術に立脚した自動車単体対策に依存するだけでなく、エコドライブや公共交通の利用促進等、移動する側の責務として、移動方法の工夫についても一層考えていく必要があります。カーテレマティックスに代表される従来の交通情報サービスは、専ら路上のドライバーを対象とした、自動車利用の利便性を高めることに主眼を置かれている面が強い傾向がありました。環境への配慮が一層求められるこれからの時代においては、移動する以前の段階から、利用者が日々の自動車利用とそれによる交通混雑からどれ程のCO2が排出されているか俯瞰でき、真にそれを実感し、経路や出発時刻の変更といった基本的な交通行動変容に留まらず、燃料消費を抑えたエコドライブ運転の実践、公共交通への乗り換え、更にはエコドライブ機器の装着や環境対応車への買換えなど、より効果的に意識改革が進むような戦略的仕組みづくりが必要と考えます。

[研究の目的]

 現在の日本における運輸部門からのCO2排出量は全体の約20%を占め、その9割は自動車交通からの排出であり、官民挙げて削減に取り組んでいます。自動車交通からの排出量の削減対策としては、昨今、環境対応車の普及などに期待が寄せられていますが、車両技術に立脚した自動車単体対策に依存するだけでなく、エコドライブや公共交通の利用促進等、移動する側の責務として、移動方法の工夫についても一層考えていく必要があります。
カーテレマティックスに代表される従来の交通情報サービスは、専ら路上のドライバーを対象とした、自動車利用の利便性を高めることに主眼を置かれている面が強い傾向がありました。環境への配慮が一層求められるこれからの時代においては、移動する以前の段階から、利用者が日々の自動車利用とそれによる交通混雑からどれ程のCO2が排出されているか俯瞰でき、真にそれを実感し、経路や出発時刻の変更といった基本的な交通行動変容に留まらず、燃料消費を抑えたエコドライブ運転の実践、公共交通への乗り換え、更にはエコドライブ機器の装着や環境対応車への買換えなど、より効果的に意識改革が進むような戦略的仕組みづくりが必要と考えます。

[研究成果の実用化による効果]

 本研究では、柏市の自動車からのCO2排出量を8%削減することを目標としています。この目標は、柏市の地球温暖化対策計画や既存の調査及び研究成果を元に設定しており、既存の類似社会実験よりも高い効果を想定しています。また、自動車運転者以外の市民も対象としており、例えば節電等交通に関わらない分野への訴求効果も想定しています。

[実験の概要]

 本研究で構築した生活活動情報フィードバックシステムを使用した実証実験を開始しています。柏市と周辺市町村に在住の市民から約150名のモニタを募りました。期間は2013年9月から3ヶ月間で、「I. 普段の交通行動の把握期間」、「II. 情報提供期間」、「III. CO2削減量や実験の参加状況に応じたインセンティブ付与期間」の3期間に区切って実施します(I. にII. やIII が順に追加されて実験が進行)。III. のインセンティブ(本研究独自のポイント)については、モニタを2群に分け感度を評価します。Google Playから本研究で開発したスマートフォンアプリをダウンロードし、モニタ登録することで誰でも実験への参加が可能です。ただしIII. のインセンティブはありません。それに代わり規定回数以上のアプリ利用で、柏の葉エコポイント(実際に柏市で運用されている地域通貨)が付与されます。

[実験の運営]

 この研究は、柏ITS推進協議会を構成する大学と企業が総務省からの委託※で実施しています。
※SCOPE:Strategic Information and Communications R&D Promotion Programme

柏の葉ポイントプログラム -市民の参加意欲を高めていく柏の葉ポイントプログラムとの連携-

[研究の背景]

 柏の葉キャンパスエリアでは、2013年3月から地域共通カード「柏の葉キャンパスカード」を活用した「柏の葉ポイントプログラム」がスタートしました。このポイントプログラムの最大の特徴は、ポイントを付与・使用するメニューにあります。従来のポイントプログラムの多くが経済インセンティブ型であるのに対し、柏の葉ポイントプログラムは、駅前の清掃活動や植栽活動など地域のさまざまな活動に参加するとポイントが貯まり、そのポイントは地域のマルシェやワークショップなどで使うことができるユニークなプログラムです。この地域と人、人と人のつながりを活性するプログラムには、すでに350名の市民が登録・参加しています。
 そして、この10月から柏ITSスマートシティでも、柏の葉ポイントプログラムとの連携をスタート。これまでマルチ交通シェアリングシステムの認証カードとして使用してきた地域カードに、新たにポイント機能を付加し、生活活動情報を活用しながらCO2の削減に貢献したらポイントが付与されるという社会実験を行います。こうした連携は、参加する市民の意欲を高めるだけでなく、より多くの市民にITSへの興味を持ってもらうためにも大切なアプローチだと考えています。

 共通地域カードは、非接触型ICカードを使用しており、鉄道やバスなどの公共交通機関で広く採用されている乗車券システムと同様のシステムを利用しています。将来的には、地域の移動で様々な交通モードを利用する際の支払い、駐車場料金お支払、百貨店やデパートでの支払い、コンビニエンスストアや地域の商店街での支払いなどが、全て一枚の共通カードで対応できるようになるよう、統合化を目指しています。公共交通の支払い、地域ポイントプログラム、地域の商店街でのポイント利用が、一枚の共通カードで実現することで、地域に最適な交通行動をとった市民へエコポイントを付与するなど、地域貢献・環境貢献活動へのインセンティブを与えることも可能となり、かつ地域内でのポイント利用など地域活性化にも寄与することができると考えています。

>>一覧へ戻る