Solution 4 すでに動き始めた次世代公共交通システム

交通弱者や日常生活圏内での移動を支える公共交通システムの実験がスタート

 気づきを高めた市民の日々の移動をサポートするためには、パブリックとパーソナルの両面から移動手段を整えていくことが必要となります。さまざまな移動手段から市民が用途や状況に応じて最適なものを選び、使いこなすことでITSとしての目的を果たすことができるのです。そして、柏市では、そのために必要な新しい公共交通システムの社会実験がスタートしています。
 これまでの公共交通システムは、大量輸送を目的にしたものが多く、時間や場所など、ほとんどが移動手段にヒトが合わせるよう設計されてきました。しかし、これからの公共交通システムは、従来では置き去りにされがちだった高齢者や障害をお持ちの方、お子さん連れやたくさんの荷物を持った方といったあらゆる利用者にとっても使いやすいものである必要があります。また、中~長距離の移動だけでなく、半径2~3キロの日常の生活圏内の手軽な移動をサポートすることも公共交通システムの重要な役割となります。柏市では、オンデマンド交通やマルチモビリティシェアリングなど、すでに多くの実証データを集め、さらなる利便性の向上をめざす段階へと入っています。今後も、不便であるか故に外出を敬遠しがちだった人たちの視点を大切に、利用する人にとって手軽で使いやすい公共交通システムの開発を進めていきます

東京大学オンデマンド交通システム -超高齢社会に向けた新しい福祉交通-

 オンデマンド交通とは、利用者の予約に応じてバスが移動する、新しい交通システムです。路線バスやタクシーの特徴をあわせ持ち、利用者がいないときは移動せず、多いときには乗り合わせて運行するという点で効率的です。このような特徴から、路線バスが衰退してしまった地方部だけでなく、都市部でも高齢者の新たな移動手段として利用されています。本システムのもっとも大きな特徴は、出発・到着時刻の指定が行えることです。これによって、病院の予約や駅での乗り継ぎなどといった、時間を守る必要のある需要にも対応することが可能となりました。また、コンピュータを活用することで、予約の処理、運行計画の作成、配車の指示、データの蓄積などが自動で行えるようになっています。こうした自動化によって、オペレータに要求される知識や負担が大幅に削減されました。予約インターフェースも、電話、タッチパネル、webページなど様々なものがあり、利用者にとって操作しやすいものを選ぶことができるようになっています。
 現在では、その有用性が評価され、30近い自治体で運行が始まっています。これらの自治体での利用ログはデータベースに蓄積されており、サービスの改善や移動実態の分析など様々な用途に使用することができます。

マルチモビリティシェアリング システム -1枚のカードで様々な乗り物が使えるマルチモビリティシェアリング-

 マルチモビリティシェアリング システムは統合データベースと共通のインターフェイスの二つのモジュールで構成されています。
 本システムはガソリン自動車、電気自動車、電動バイク、自転車などの複数のシェアリングサービスを統合しました。利用者は一つのIDとICカードを持ち、共通インターフェイスから様々なサービスを利用することができます。例えば、借りたいと思った車両が他の利用者により、使われている場合には他交通手段の選択肢を選ぶことができます。本システムのログデータは統合データベースに蓄積され、運行地域の動きを再現することができます。蓄積されたデータは都市計画にも活用できます。
 本システムには既存のシェアリングシステムと違う二つの特徴があります。一つ目は利用者が共通インターフェイスから多様な交通手段を共有することができます。二つ目はワンウェイ(One-way)利用にも対応できます。この特徴により、モビリティの改善、管理コストや二酸化炭素の低減に貢献できます。

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